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山形方人(nihongo)の付け足し

Twitterアカウント @yamagatm3 の付け足し おもに個人的な研究関係の情報を掲載

研究者情報 2017

Twitter(日本語)Twilog

 

Twitter(英語)

 

ResearchGate(発表論文など。ダウンロードも可能。)

https://www.researchgate.net/profile/Masahito_Yamagata

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 Semantic Scholar (重要論文とそれらの関連性)

masahito yamagata - Semantic Scholar

 

Strikinglyのホームページ(研究内容など、時々更新。)

http://masahitoyamagata.strikingly.com

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脳望遠鏡:Biology 5.0で脳に挑む

(最近の研究についての日本語による一般向け解説。academist Journalの連載記事)

https://academist-cf.com/journal/?s=Biology+5.0

academist-cf.com

 

ブログ「わがまま科学者」

http://masahitoyamagata.blog.jp  

 

Harvard (連絡先はこちら)

http://www.people.fas.harvard.edu/~yamagata/

http://scholar.harvard.edu/masahitoyamagata

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科研費研究者番号 00202375

研究者リゾルバ番号 1000000202375

ORCID   0000-0001-8193-2931

 

jglobal.jst.go.jp

その他、動かしているTwitter

 

Sdkの構造生物学

シナプス認識分子Sidekickの接着と特異性の分子的基盤

http://dx.doi.org/10.7554/eLife.19058

Molecular basis of sidekick-mediated cell-cell adhesion and specificity

Kerry M. Goodman, Masahito Yamagata*, Xiangshu Jin, Seetha Mannepalli Phinikoula S. Katsamba, Göran Ahlsén, Alina P. Sergeeva, Barry Honig, Joshua R. Sanes*, Lawrence Shapiro

(Department of Biochemistry and Molecular Biophysics, Columbia University, New York, NY 10032, USA.

*Department of Molecular and Cellular Biology and Center for Brain Science, Harvard University, 14 Cambridge, MA 02138, USA)

 

この数年間、私が心がけてきたことに、非常に違う研究分野の研究に関わってみるということがあります。今回は、コロンビア大学ポスドクKerry Goodman博士(Larry Shapiro博士、Barry Honig博士のラボ)との共同研究で、本格的な構造生物学の論文で、eLifeに発表しました。

 

神経回路のでき方:鍵と鍵穴

神経回路というのは、ニューロンから伸びた突起同士が繋がってできます。神経系というのは、学習して何かを記憶をしたりすれば変化しますが、ヒトの神経回路、ネズミの神経回路というのは違いますし、ヒトのそれぞれの個人の神経回路も基本的なところは同じ、つまり遺伝情報によって決まっているということです。

神経回路ができる時には、異なるニューロン同士の突起が「接着」してつながるというメカニズムは、半世紀ほど前、Roger Sperry (1913-1994)によって化学親和説という説が提唱されました。これは、直観的に単純なアイデアで、それぞれのニューロンの表面に鍵、それがつながる別のニューロンには鍵穴があって、その鍵と鍵穴の形が同じなので、正しくつながるということです。そして、20年ほどの間に、こういう鍵と鍵穴のような役割をする分子というのが実際にわかってきました。

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ニューロン同士が正しくつながる時の鍵と鍵穴(Sanes and Yamagata, 2009)。

 

免疫グロブリンスーパーファミリー接着分子Sidekick

免疫グロブリンスーパーファミリーに属するSidekick1Sdk1)およびSidekick2Sdk2)は、2002年,Yamagataらにより,ニワトリの網膜において異なる種類の網膜神経節細胞に特異的に発現し、ニューロン間の結合発生に関わる、そのような鍵と鍵穴の役割をする細胞表面分子として発見され、研究されてきました。

 

OMIMの解説

Sidekick-1   https://omim.org/entry/607216

Sidekick-2   https://omim.org/entry/607217

 

2015年、マウスの網膜においては、Sdk2遺伝子の発現は、網膜のW3B神経節細胞およびそのシナプス結合パートナーであるVG3アマクリン細胞において発現していることを報告しました。そして、Sdk2遺伝子の発現の欠損したマウスを作製することで、このシナプスの機能に障害が起こることを示しました。

 

シナプス接着分子Sdk2は網膜において物体の動きを検出する神経回路の形成に機能する

http://first.lifesciencedb.jp/archives/10478

 

2つのSdkは、6個の免疫グロブリンドメイン(Igドメイン、楕円形)、13個のフィブロネクチンIIIドメイン(FNIIIドメイン、長方形)、1つの膜貫通ドメイン、細胞質ドメインをもつ巨大なタンパク質です。細胞質ドメインにはシナプスに局在するタンパク質にしばしばみられるPDZドメインと結合するPDZ結合モチーフがあり、実際に、PDZドメインをもつある種の足場タンパク質と結合することがわかっています。

 

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特に重要なのは、Sdk1Sdk1と,Sdk2Sdk2と特異的に結合し,Sdk1Sdk2とは結合しないホモフィリック(同種親和的)な性質を持つということです。つまり、鍵と鍵穴が同じ分子になっているということです。したがって,2つのニューロンが同じSdkを発現していれば,神経突起どうしがホモフィリックな結合を起こし接続にいたると考えられます。

 

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Sdk接着に必要な構造

今回、馬蹄形の立体構造を持つN末端の免疫グロブリンドメインIg1-4)のSdk1Sdk2外部ドメイン領域の結晶構造を解くことに成功し、その構造から、ホモフィリックな結合がどのように生じるのか、ということを推測しました。

 ホモフィリックな分子間相互作用をする免疫グロブリンスーパーファミリーの認識分子は数多く知られていますが、Sdkとよく似ているものに、Dscam, Contactin, Neurofascinなどがあり、既にその構造が推定されています。驚いたことに、Sdkの構造から推定されるホモフィリックな分子間相互作用は、これまで解明されてきた他の免疫グロブリンスーパーファミリーの様相とかなり違っているようです。例えば、Contactin2は、Ig2同士が相互作用をするということで結合するようですが、Sdkの場合、Ig1とIg2、Ig3とIg4、そしてIg1同士が相互作用するという形になっているようです。

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この構造を見てみると、2量体になった時、それぞれのインターフェースで相互作用していると考えられるアミノ酸残基がどれなのか、というのがわかります。特に、N22(アスパラギン残基22)は、その相互作用している位置にあります。この残基を別のアミノ酸に変異すると、2量体の形成が激減することがわかりました。そして、分子全体を細胞に発現させた時に観察される細胞接着活性も消失します。

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興味深いことに、この細胞接着活性を失った変異分子は、異なる細胞間での細胞接着をしなくなるだけでなく、一つの細胞に発現させた場合も、正常なものとは違う様相を示すことがわかりました。つまり、本来、細胞接着のために、違う細胞上で発現した場合に起こる分子間相互作用(Trans相互作用)が、同じ細胞表面上でも起っているということです(Cis相互作用)。

 

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Sdkの場合、Cis相互作用とTrans相互作用を同じ構造を使って行っている。その結果、細胞接着が起っていない場合は、同じ表面上で相互作用していることで、細胞接着の特異性を高めているのではないか、というモデルを提案しています。

 

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半世紀前、Sperryが化学親和説を発表したころには、このような神経回路形成に関わる細胞表面分子の実体さえもわかっていなかった。また、細胞接着研究の歴史の中では、Ruoslahtiらが見つけた細胞接着分子フィブロネクチン中のRGDという短かな配列がそのレセプターとの相互作用に大切であると、驚きをもって迎えられた時代もありましたが、時代が進んで、こういうことがわかってきたというのが隔世の感があります。

 

ARTEMIS

 

特定神経細胞の電顕レベルの超微形態と結合性を短期間に解明する方法論(ARTEMIS法)

http://dx.doi.org/10.7554/eLife.15015

Reconstruction of genetically identified neurons imaged by serial-section electron microscopy

Maximilian Joesch , David Mankus , Masahito Yamagata , Ali Shahbazi , Richard Shalek , Adi Suissa-Peleg , Markus Meister ,

Jeff W. Lichtman , Walter J. Scheirer, Joshua R. Sanes

 

私たちが最近発表したsplit HRP(先日解説)に続いての植物由来ペルオキシダーゼを用いたコネクトミクスの論文です。

現在、神経回路のシナプス結合性のパターンまでのリコンストラクション(コネクトームの構築)には、多数の連続切片の電子顕微鏡撮影が必要です。しかしながら、神経回路のコネクトームを完成させるのは、莫大な時間と労力を要します。

コネクトーム - 脳科学辞典

しかし、KOマウスとwildtypeマウス、疾患モデル動物と正常動物、薬剤を投与した動物とその対照動物の神経回路を比較するために、すべての神経細胞のコネクトームを観察する必要性は必ずしもないわけです 。今回、これまでの神経細胞をすべて観察するコネクトーム構築ではなくて、ある特定の神経細胞だけを電顕レベルで短時間でリコンストラクションする方法を開発しました。

このためには、まず電顕で観察が可能な遺伝的なレポーター遺伝子を特定の神経細胞で発現させる必要があります。今回利用したのは、植物由来の酵素ペルオキシダーゼのcDNAのアデノ随伴ウィルスベクターAAVによる強制発現です。

植物由来のペルオキシダーゼは、2つのタイプを用いました。一つは、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼHRP、もう一つはアスコルビン酸オキシダーゼ(APXあるいはAPEX)です。これらのペルオキシダーゼcDNAをCreレコンビナーゼが 特定の神経細胞で発現するマウスの神経系で発現させ、それをペルオキシダーゼの基質であるジアミノベンジジン(DAB)で染色後、電子顕微鏡で観察する。このアイデアは一見簡単そうなのですが、実際は困難であって改良が必要でした。

具体的には、ペルオキシダーゼの活性が弱いと 、固定後の試料内で酵素反応を長時間行わせるために、電顕で観察できる超微形態が失われてしまう(酵素は強い固定液の中では反応しないし、過酸化水素が組織にダメージを与える)。さらに、昔から使われてきているペルオキシダーゼの基質であるDAB反応産物の沈着(電子密度が高い)の検出感度が電顕下では期待したほど良好ではないということでした(通常の試料作製法ではうまく見えなくなってしまう)。

まず、これらの酵素の活性を高め検出感度を良くするために、HRPとAPEXの配列を改良しました。APEXは、 MITのAlice Ting教授のグループで開発されたAPEX2を使いました。そしてerHRPは私が哺乳動物で活性を強めるように配列を改良したものです。

次に、電顕試料を作製する際、試料を「還元」するという単純なステップを加えることで、 ペルオキシダーゼによるDAB沈着を超微形態を失うことなく感度よく観察できることがわかりました。

 

f:id:dufay:20160629153606j:plain(論文より引用、Creative Commons Attribution)

 

具体的に、この方法が、哺乳動物マウスの視覚系と無脊椎動物ショウジョウバエの神経系で利用できることを示しました。erHRPはAPEX2より強いペルオキシダーゼですが、小胞体ERのルーメン(細胞外に相当)に局在するように発現させないと活性を持たないため、ERが少ない軸索での検出には適しません。一方、APEX2は、細胞質内で活性を持つので、軸索、樹状突起、細胞体のどこでも利用することができます。

このようにして特定の神経細胞を標識した薄い連続切片を、Lichtman教授らがコネクトーム構築の目的で開発してきたATUMという方法で作製し電顕撮影するのですが、 この方法を使うと神経細胞が標識されているので、低解像度の電顕写真が利用できることがわかりました。更に、それぞれの切片で標識された神経細胞を自動的にトレースすることができるコンピューターアルゴリズムを開発しました。

以上、植物由来遺伝子の分子生物学を用いた神経細胞の標識、電顕試料の処理法、コネクトーム構築にも使われる連続切片作製と撮影技術、更にはコンピュータプログラムの開発という一連のマルチディシプリナリーな方法により、 特定の神経細胞の超微形態とその結合性を検出できる戦略が開発されました。この方法により、ノックアウト動物 、疾患モデル動物、薬剤投与した動物などの神経細胞の超微形態や結合性の観察が短期間で可能になるので、 様々な研究に有用な方法論であると考えます。もちろん、マウスだけでなく、他の動物でも利用が可能です。オープンアクセスでダウンロードできる論文の付属資料にプロトコールが付いています。erHRP、APEX2を持つAAVベクターは、Addgeneから、トレースするMatlabソースコードなどはeLifeのサイトから入手可能になる予定です。

なお、これらのペルオキシダーゼレポーターの取り扱いについては、私が担当しましたので、詳細な問い合わせに対応できますので、質問などありましたら、お知らせください。

 

ARTEMIS

Assisted Reconstruction Technique for Electron Microscopic Interrogation of Structure

split HRP

split HRPによる細胞間での蛋白質同士の相互作用とシナプス結合の可視化

http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/full/nbt.3563.html

A split horseradish peroxidase for the detection of intercellular protein–protein interactions and sensitive visualization of synapses

Nature Biotechnology (2016) May 30. doi: 10.1038/nbt.3563.

Martell JD1, Yamagata M2, Deerinck TJ3, Phan S3, Kwa CG1, Ellisman MH3,4,5, Sanes JR2, Ting AY1  (Corresponding authors: Joshua R Sanes, Alice Y Ting)

マサチューセッツ工科大学(MIT)化学教室のAlice Ting教授の研究室との共同研究。中心になって研究を行ったのは、MITの大学院生だったJeff Martellさん(現在は、カリフォルニア大学バークレー校でポスドク)。

 

細胞間の蛋白質同士の相互作用は、細胞増殖、免疫応答、感染、シナプス伝達など、様々な生物学的な過程での細胞同士のコミュニケーションに必須です。

こういう細胞外での蛋白質間の相互作用を可視化する方法として有名なのが、蛍光タンパク質GFPを2つに分割して、それを再構成させるsplit GFPという方法です。しかし、この方法は感度が不十分で、分割したGFP同士の相互作用もあるため、この方法で検出できる相互作用の特異性にも問題がありました。例えば、シナプス結合の観察のため、私達がこの方法を使って作ったマウス(GRASPマウス)では感度が不十分で、脳の小さなシナプスでは利用が非常に難しいのです。

今回、細胞外でも働く高感度な酵素として広く利用されてきたヘム結合糖タンパク質である西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)を2つに分割するsplit HRP(分割HRP)という方法論を開発しました。HRPを2つのフラグメントに分割できるアミノ酸の箇所を見出し、更に分割した2つのフラグメントをDirected evolutionによるスクリーニングすることで、高活性を有する再構成に有利な新たな配列を創りだしました。この再構成を利用して観察できる蛋白質間の相互作用は、HRPの蛍光検出あるいはDAB等を利用することで電顕で観察できます。シナプス接着分子であるニューレキシンとニューロリギンにそれぞれのフラグメントを融合させることで、2つのニューロンシナプス結合を作った時のみに再構成できるようにしました。このシステムは、in vitroの神経細胞培養系さらにマウス視覚系で使用することができることを示しました。

split HRP法は、この他にも様々な細胞間の相互作用メカニズムの研究に有用であろうと予想されます。

 

1Department of Chemistry, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massachusetts, USA.

2Department of Molecular and Cellular Biology, Center for Brain Science, Harvard University, Cambridge, Massachusetts, USA.

3National Center for Microscopy and Imaging Research, Center for Research on Biological Systems, University of California at San Diego, La Jolla, San Diego, California, USA.

4Department of Neurosciences, University of California at San Diego, La Jolla, San Diego, California, USA.

5Salk Institute for Biological Studies, La Jolla, San Diego, California, USA.