山形方人 Masahito Yamagata, PhD

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脳科学辞典「シングルセルRNAシーケンシング」

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シングルセルRNAシーケンシング(single-cell RNA sequencing, 以下scRNA-seq)は、次世代シーケンサー(next generation sequencer、以下NGS)を用いることで、個々の細胞が保持しているmRNA全体を質的、量的に網羅的に調べる方法である。次元圧縮などの数理的な解析と組み合わせることで、遺伝子発現の状態に基づいた細胞の分類を行うことが可能であり、従来の組織学的、あるいは細胞生物学的手法では知られなかった新規の細胞種の同定や細胞状態の推定を行うことが可能になった。また、遺伝子発現プロファイルの変化に基づく擬時系列解析(pseudotime analysis)によって、刺激や発生に伴う細胞状態の遷移の描写ができる。神経系では、この方法により、神経細胞や非神経細胞の分類や状態についての知見が深まり、新しい神経細胞タイプ、細胞マーカー、病態の理解、更に機能的な遺伝子の同定などが系統的かつ網羅的に行われるようになった。scRNA-seqに、空間的情報、エピゲノム情報、タンパク質情報などの複数モダリティを取り入れた統合解析(multimodal single-cell omics)も行われている。

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